状況調査
慢性腎臓病(CKD)医療連携にかかる状況調査 2015年8月~9月実施
調査方法
滋賀県下の診療所にアンケートを郵送し、郵便で回答を得ました。以下がその内容です。
アンケート内容(概要)
1.医療機関の所在地域 2.標榜診療科 3.腎臓内科への紹介状況
4.腎臓内科への紹介時期 または腎臓内科に紹介しない理由
5.腎臓内科への糖尿病患者紹介の有無とその時期
6.滋賀県下で腎臓内科紹介基準認知度
7.お薬手帳CKDシール、CKD連携パス認知度
8.専門医への要望他
1.医療機関の所在地域 2.標榜診療科 3.腎臓内科への紹介状況
4.腎臓内科への紹介時期 または腎臓内科に紹介しない理由
5.腎臓内科への糖尿病患者紹介の有無とその時期
6.滋賀県下で腎臓内科紹介基準認知度
7.お薬手帳CKDシール、CKD連携パス認知度
8.専門医への要望他
結果 1.2 回答施設の地域・標榜診療科 (アンケート回収割合 52%)

3.腎臓内科への紹介状況 (地域別)
紹介経験のある施設は、診療所全体86%、内科標榜診療所の91.7%ありました。

4.腎臓内科への紹介時期(地域別)・紹介しない理由




紹介しない理由
紹介するような患者がいないが29件(うち内科標榜12件)と最多でした。また、患者が希望しない(患者の理解が得られにくい、遠方である、高齢のため受診困難)も大半でしたが、紹介しても患者にメリットがないとの意見も見られました。腎臓内科への紹介時期(腎機能)
腎機能低下があれば腎臓内科に紹介するとされた施設のうち、紹介のタイミングとなる腎機能について血清Cr値とeGFR値についてまとめました。紹介のある241施設のうち、Cr値は177施設 (73%)、eGFR値は97施設(40%)をそれぞれ母集団としています。

80%以上の施設が紹介をするCr値は2.0mg/dl以下でしたが、頻度は2.0mg/dlが最も高くなっています。

eGFR値での紹介は40~50未満とした施設が最も多く、Cr値を指標とする場合よりもより早期で紹介を行っていることが示唆されています。
5.腎臓内科への糖尿病患者紹介の有無とその時期
糖尿病患者の紹介は地域差が大きく、これには腎臓内科医が糖尿病診療も行っているかどうかが一因であると思われます。第3期までの紹介頻度は50%に満たず、透析を考えるときに紹介するとの意見も多く見られました。
6.滋賀県下で腎臓内科紹介基準認知度と紹介時期について


腎臓内科への紹介時期(紹介基準認知度別)



7.お薬手帳CKDシール、CKD連携パス認知度

CKDパスの使用について
CKDパスを使用している医療機関は82施設あり、地域ごとの内訳は、大津27施設、草津栗東6施設、守山野洲5施設、甲賀湖南3施設、近江八幡蒲生郡17施設、東近江15施設、彦根3施設、湖北5施設、湖西1施設です(下図)。
地域による運用件数の差はありますが、滋賀県下全域でCKDパスが使用されています。
地域による運用件数の差はありますが、滋賀県下全域でCKDパスが使用されています。

8. 専門医への要望他
専門医に依頼しても期待したような効果は得られない、どのような診療を行うのかがわからず患者に説明できない、紹介したあとにどうなったかが報告がない(たとえば腎炎疑い例での診断結果や治療方針など)、指導が厳しすぎ患者が受診を嫌がる、担当医の変更が多いなどの意見がみられました。考察

腎臓内科へ紹介している医療機関は内科標榜の91.7%であり、地域別にみても湖北以外では90%を超えていました。
しかし、かかりつけ医からの紹介時期は、腎機能低下に関する紹介時期はCr2.0 mg/dlと回答した施設が最多であり、この値はeGFRに換算すると60才の男性で28.1 ml/min./1.73m2、60才の女性なら20.7 ml/min./1.73m2,といずれもCKDステージ4Gと腎機能は高度低下の状態です。
一方、eGFRでの紹介は50 ml/min./1.73m2の頻度がもっとも高くなっています。

今後、腎機能の評価を血清Cr値ではなくeGFRを行うこと、eGFRにもとづいた紹介基準の情報提供を行うことで、より早期の紹介を推進することができるのではないかと考えられます。
また、糖尿病患者の紹介は腎症4期以降とするものが多く、糖尿病による透析導入減少を目指すためにも、糖尿病の医療連携と共同した関わりが重要であることが示唆されています。
また、糖尿病患者の紹介は腎症4期以降とするものが多く、糖尿病による透析導入減少を目指すためにも、糖尿病の医療連携と共同した関わりが重要であることが示唆されています。